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過去50年のタイの社会的変化を反映している村

冒険好きな若い人類学者ウィリアム・クラウスナーが1955年に1年間ノンコン村に滞在したとき、住人は時計、ランプ、冷蔵庫を持っておらず、たった1台のラジオがあるだけでした。多くの子供たちが4年間の教育を受け、大人はコメ農家として働き、事実上無学であるため、世界へ出て行く人は少なかったです。このタイ北東部にある村は結束、内向的な地方のコミュニティの象徴となっていました。

60年ほど経った今日、アメリカ人の研究者が年単位の滞在を開始し、各家庭にはピックアップトラックないしはバイクがあり、携帯電話はいたるところにあります。(携帯電話は「祖母世代だけが持っていない」と村人がいうほどに普及しています。)
子供達は3つのビデオパーラーで遊んでいます。さらに村にはコンビニがあり、ATMやピザの宅配サービスもあります。大半の地域のは若い労働世代は、何人かは大卒で、農家にはならずバンコクや他の都市で働いています。

訪問者との会話の中で、村人は国の政治的な発展にはリアルタイムでメディアを通して知ることができると話します。
「過去の影はまだありますが、街には新しい娯楽があります。村はネガティブな面もポジティブな面も伴いながら準都市コミュニティへと変化しています。」とクラウスナーは言いました。彼は村の女性と結婚し、ライターとタイ文化のエキスパートとして顕著なキャリアを形成しました。また、NPOの役員も務めています。

ノンコンの劇的な変化は「貯水池村」としてイーサンや北東などタイにとって社会的かつ政治的な発展を反映しています。タイの貧困層も残っている中で、後退しているという人もいます。変化はバンコクとの差をより深くしていっているようにも見えます。同時に、このような変化は甘やかされた首都に対する反感も爆発させ、エリートの流動性、経済の向上心、政治への意識が農民の間で高まっています。

複雑な都市と地方間の関係では、多くの人がホワイトカラーとして働き、銀行員や看護師などの専門的な分野で活躍しているにもかかわらず、多くのバンコクの人々が、北東部の村出身の人たちのことを無学だと思っていて、内向的で、「水牛」とけなしているのです。
前首相のタクシン・チナワットを支持する通称「赤シャツ」運動は、広く北東部で始まり、バンコクの政界の黒幕に反対する怒りや不満を反映させました。さらに2010年には抗議者たちは首都の一部を占拠し、軍によって鎮圧されました。
北東部の多くの人々は、クラウスナーが知っているような穏やかな人々ではなく、権力に従い、自分たちの権利を犠牲にするつもりはなく、家族、親しい人々、コミュニティーに対する野心があります。

「彼らがコメ農家だった頃、人々はお互いに助け合っていました。お互いがお互いを頼りにしていましたが、機械を使うようになってからはそのような光景は見られなくなりました。現在、生きるために共に働くという感覚はもうないのです。」と小学校校長のThatsanai Chainaenは言いました。昔は、料理を作り、他人と分け合ったといいます。「今はセブンイレブンに行けば買えるのです。」と彼は言いました。
草木が生い茂る村の寺院やワットで寝転びながら、長年にわたってコミュニティーの発展に寄与してきた80歳のルアン・プ・ウォン大修道院長は、「貧乏でありながらも、私たちが大切にしてきたのは、共通の精神です。進歩は遅かったですが、強い絆で結ばれていました。」
別の村のリーダーは、日経アジアンのインタビューの中で、懐かしさをあらわにしましたが、理想的な過去、明るい現在や未来にはすがりついていないようです。
彼らは過去の生活を思い出していました。厳しい貧困、骨の折れる仕事、不十分な教育、家族計画の欠如、栄養不足、短い寿命と死に至る病などです。人が死ぬところというイメージから、人々は病院に行くのを怖がっていました。
しかし、若者の都市部への流出や訴訟、世代間の対立、村人の80%が苦しむ負債などはありませんでした。今では普及しているギャンブルや過度の飲酒は、規制されていたため、窃盗はほとんどありませんでした。近所の人と通りすがりの人の間には、壁やフェンスはありませんでしたが、今では普通にあります。
クラウスナーが初めてこの村に着いた時、裕福な村人はブリキ屋根の木造住宅に住んでいたにもかかわらず、136家庭が竹とふきわらでできた家で生活していました。家族は農場で一緒に働き、お金ではなく物々交換に頼って生活し、夜には火の周りに集まって世間話や民話を話していました。「今はテレビの前に座り、子供達は祖母の話に興味を持ちません。スマートフォンで事足りるからです。」とクラウスナーは言います。

怠けた犬が路上でいびきをかき、鶏が走りまわり、優しいそよ風が竹林を揺らしますが、ウボンの首都から16km離れたノンコンでは今、6件のコンビニがあります。村の入り口付近にはハッピーコーヒーショップというオープンテラスのカフェが昨年オープンし、エスプレッソや「スカンジナビア・ラテ」が子供達に人気です。近くにはATMがあり、村人は自由にお金の出し入れができるようになりました。